亜鉛合金のホットチャンバーダイカストマシンに取り付けられているノズルに関して質問です.連続稼働時間が長くなるにつれて,ノズル先端が詰まってしまい(流路を塞いでしまい)最終的には射出不良になってしまいます.ホットチャンバーダイカストマシンにおけるノズル詰まりのメカニズム及び対策(ノズルの形状,表面処理など)をご教示頂きたいです.
ホットチャンバーマシンのノズル詰まりは,大変難しい問題です.必ずしも明確になっていないようです.
ノズル詰まりには,次の3種類があると考えられます.
1つ目は,ノズル先端の凝固による詰まりです.これは,ノズル温度が様々な理由で低下したことによります.例えば,メルティングポットの湯面が低下して,ノズル温度が低下してノズル内の溶湯が凝固する場合があります.また,ダイカストマシンの構造にもよりますが,スプルーブッシュの冷却が強すぎて,ノズル先端が凝固する場合があります.湯面高さの維持や,スプルーブッシュの冷却の適正化などを行うことで改善できると思います.
2つ目は,リターン材が多い場合やインゴットの清浄度が低い場合などに,ノズル内で酸化物などが堆積してノズル詰まりを起こす場合があります.リターン材を40%以下にしたり,清浄度の高いインゴットを使用したりすることで,回避できると思います.
3つ目は,亜鉛合金中に含まれる4%程度のアルミニウム成分と,ノズル(SKD61)の鉄が反応して,Al-Feの金属間化合物が,ノズル内に層状に形成されて,それが繰り返しの鋳造により成長して,ノズル詰まりになるものです.この場合は,定期的にリーマなどでノズルの清掃を行ったり,ノズルに窒化などの表面処理を行ったりすることで改善できると思います.さらに,ノズル径を適正化します.ノズル径は,溶湯の流量を考慮して選定しますが,径が小さいと詰まりやすくなります.
ご質問の場合のノズル詰まりは,恐らく3つ目ではないかと思われます.金属間化合物層が形成される前に,清掃を行うことが大切かと思います.いずれにしても,ノズルとスプルーブッシュの構造にも依存するので,ダイカストマシンメーカー及び金型メーカーに相談することをおすすめします.
(『鋳造工学』92巻11号掲載)