「魔法のフライパン」や「南部鉄器」などの良いといわれる調理器具の鉄の組織とはどういうものでしょうか.また,急須やフライパンなどはなぜ表面が黒いものが多いのでしょうか?

 一般的な調理器具として使われる「南部鉄器」の組織として,白鋳鉄は避けなければなりません.その理由として,繰り返しの熱により,器具が割れたりするためにチル化した組織にならないように注意します.したがって,一般的な組織は片状黒鉛鋳鉄です.しかし,最近は電磁調理器等の使用により,さらに熱ショックに強い南部鉄器が望まれてきています.また,重いということで,薄肉で強度のある球状黒鉛鋳鉄を用いた調理器具が多く使用されています.

 色については,昔より「南部鉄器」の調理器具には「漆」が塗られて,黒が基調となりそのなごりが残っています.最近の南部鉄器の調理用塗料としては,シリコン系の樹脂塗料やカシュウ(漆系の合成樹脂塗料)で着色されています.食品衛生法や耐熱性の樹脂の関係で,調理用塗料として適さない色もあることや,黒色は高級感があるということで使用されています.

(『鋳造工学』92巻12号掲載)