高真空ダイカスト製品で,T6熱処理後ブリスター不良はほとんどありませんが, 変形不良が大量に発生してしまいます.変形の原因とブリスター不良と変形不良の関係性はあるのでしょうか.
基本的にT6処理を行うことで,製品の材料中では析出相が現れ,F材と比べると微細に製品の寸法が変わります.質問としては,微細な寸法の変化ではなく,変形であるとのことで進めます.また,「T6熱処理後ブリスター不良はほとんどありませんが」とのことですので,ブリスター不良と変形不良は切り離して考えるのが良いかと思います.
通常T6処理における溶体化処理工程では,非常に高温な処理であるため,アルミニウム合金の強度が著しく低下し,ダイカスト品の自重により変形をしてしまうことが多いです.また,焼き入れ工程の水冷による急冷作業のため,急冷によるダイカスト品内部に残留応力が発生してしまい,加工などで変形してしまう可能性もあります.対策とすれば,下記のようなります.
1.自重による変形
・自重で変形しないようにダイカスト品の置き方を適正化する.
・自重で変形しないような支えのある治具設計を行う.
・必要な強度など機械的性質をクリア出来るように確認をして,溶体化温度(450℃等)を下げる.
2.急冷による変形
・必要な強度など機械的性質をクリア出来るように確認をして,焼き入れの水温を60℃程度に上げる.
3.お客さんと相談の上,製品形状の変更
・梁形状な部分をなくす
・変形する薄肉な部分の肉厚を増す.
・変形する箇所にリブ補強を行う.
(「鋳造工学」93巻12号掲載)