黒心可鍛鋳鉄は強度や靱性を大きく改善している様ですが,球状黒鉛鋳鉄と比較してメリットはどのようなものなのでしょうか?
可鍛鋳鉄は,球状黒鉛鋳鉄が出現する前は最も強靭な鋳鉄として,パイプ継手,自動車のフレーム,歯車,建築金物,家庭用品,工具などに多用されていました.黒心可鍛鋳鉄は,フェライト基地に塊状の黒鉛が点在しており,片状黒鉛鋳鉄と比べると基地の連続性が高く,引張強さや伸びなどの機械的性質に優れています.一方,黒鉛が球状である球状黒鉛鋳鉄と比べると,引張強さや伸びなどの機械的性質は劣ります.その反面,化学組成でSi含有量が少ない分,基地組織に低Siフェライトが存在するので,低温での伸びや衝撃特性に優れています.また,他のフェライト基地の鋳鉄に比べて,軟らかいので被削性にも優れています.さらに,鋼管とのねじ接合において勘合しやすく,いわゆる「かじり」の現象がおきにくいとされています.
参考文献:新版 鋳鉄の材質,日本鋳造工学会(2014)103-105
(『鋳造工学』94巻10号掲載)