アルミニウムダイカストの水残り不良と言われる不良は、何故黒くなるのでしょうか。また、外観以外に何か悪さがあるのでしょうか?

アルミニウムのやかんに水を入れて沸騰させていると自然にやかんの内底が黒くなることを見たことがあると思いますが,ほぼその現象と同じことすなわち沸騰水とアルミニウムとの反応が起こっていると思われます.溶融したアルミニウム合金が水と接触した場合,爆発的に水が沸騰,蒸気膜で溶融したアルミニウム合金を包み込む形になり1),アルミニウム合金の表面に水和酸化物皮膜(ベーマイト膜)が発生します.沸騰水であるとある程度の時間が必要ですが,水蒸気膜が発生していますので急激に水和酸化物皮膜(ベーマイト膜)ができるものと思われます.この水和酸化物被膜は水中に存在する不純物,特にSiO2がこの表面被膜に吸着し黒色化すると考えられます2~6).着色については山崎良夫らによる一連の論文が参考になると思います.この黒くなっている部分には,この水和酸化物被膜が存在するため,十分に融着されていない可能性があり,漏れ不良や割れ不良に繋がる可能性があります.

参考文献

賞雅寛而:日本舶用機関学会誌 26(1991)204

播本寛光,山崎良夫,高橋 透,深尾 武:金属表面技術9(1958)122

山崎良夫,遠部八朗,中村昭二,播本寛光:金属表面技術9(1958)422

山崎良夫,井上一正,矢野清,播本寛光:金属表面技術10(1958)376

山崎良夫,播本寛光:金属表面技術14(1963)185

山崎良夫,播本寛光:金属表面技術16(1965)250

(『鋳造工学』96巻8号掲載)