近年,高品質なダイカストを生産する技術として,「高真空ダイカスト」が適用されていますが,従来の「真空ダイカスト」との違いは何ですか.

従来の真空ダイカストは,キャビティ中のガスを積極的に逃がし,背圧をなくして湯流れを改善するねらいで使用されてきました.この方法では完全に空気の巻 込みを防ぐことができないため,溶体化を行うような熱処理や溶接ができず,また,機械的性質も合金そのものの性質より劣ることになります.

このような空気 を巻き込むことを回避するため,金型キャビティの空気を吸引し,真空度を上げるダイカストが登場し,従来のダイカストでは適用できなかった高い機械的特性 を要求される自動車のサスペンション部品や車体部品などに適用されるようになって来ました.この時の真空度は高ければ高いほど良いのですが,一般的には 5~10kPa以下であり,高真空ダイカストと呼ばれています.

金型キャビティを高真空に保つため,金型のパーティング面などにシールをしています.ま た,真空度を高く保つだけでなく,溶湯の脱ガスはもちろんのこと離型剤やチップ潤滑剤から発生するガスをできる限り少なくするような方策をとっています.

従来から用いられている真空ダイカストでも金型キャビティの空気を巻き込まないように吸引していますが,金型のシールがされていなかったりして,真空度は それほど高くは無く,熱処理や溶接はできません. 高真空ダイカスト技術は,ただ単に金型キャビティを高真空にするだけの技術ではなく,高品質を目指した総合的なダイカスト技術であると言えます.