HPDCのスリーブに使われる材質にはどのようなものがありますか?

アルミニウム合金ダイカスト場合,射出スリーブには650~700℃の高温の溶湯が注湯されます.その際,給湯口の直下は,長期の使用によりアルミニウム 溶湯に侵食(溶損)されることから,アルミニウム合金ダイカストの射出スリーブは,一般的にはSKD61などの合金工具鋼が使用されます.

SKD61は, 0.32~0.42%C,4.80~5.50%Cr,1.00~1.50%Mo,0.80~1.15%Vを含む合金鋼で,高温硬さ,耐摩耗性,靭性に優れ ておりダイカスト金型の入れ子などに使用される熱間金型用材料です.さらに耐磨耗性を向上させる目的で、窒化などの表面処理したり、内面に耐溶損性,耐摩耗性に優れた合金を溶射したスリーブが使用されています.

そ の他,鋼に比較して熱伝導率が低く保温性に優れたサイアロンなどのセラミックスを射出スリーブに使用することもあります.これにより,射出スリーブ内での 溶湯の冷却・凝固を抑制し,ダイカストの機械的性質を低下させる破断チル層の生成量を低下させることができます.

また,プランジャーチップ(鋼製)と射出 スリーブの焼き付きを防止するためのチップ潤滑剤を低減でき,ガス欠陥を少なくすることも可能です.また,チタンにセラミックス粒子を均一に分散させた サーメット系の材料を使用することもあります.チタンは軽量で高耐蝕性,低熱伝導性であることからセラミックススリーブと同様な効果が期待されます.