現場で湯流れを簡単に調べる方法にはどんな方法がありますか?
湯流れ性を評価するには様々な方法があります.まず,合金特性としての湯流れ性は,渦巻き試験鋳型や直線状試験鋳型,真空流動性試験鋳型を用いて 「流動長さ」を測定して評価されます.
渦巻き試験鋳型は,蚊取り線香のような渦巻き状の狭い溝を設けた鋳型の中に溶湯を一定の条件で鋳込み,流れが止まる までの長さを測定して評価します.直線状鋳型は,溝が直線状に設けられたものです.また,真空流動性試験鋳型は,真空にした(厳密には減圧した)金属のパ イプの中に溶湯を吸い上げてどの程度の長さまで吸い上げることができるかで,流動性を評価するものです.
そもそも,流流れ性が良いとか悪いとかは合金成分や組成だけで決まるものではなく,表面張力や表面の酸化状態など溶湯と雰囲気との関係や,鋳込み 温度や鋳型温度あるいは鋳込み速度,ガスの抜けやすさといった鋳造条件によっても大きく変わります.したがって,先のような試験方法によって求められた 「流動長さ」はあくまでも参考程度になります.実際に製造現場で,湯流れ性が問題となるのは,未充填,湯境,湯じわなどがほとんどです.
ダイカストでは,しばしば湯流れの状態を評価する方法としてショートショット方を用いる.ショートショットとは,実際に射出・充填する量より少な い溶湯を射出スリーブ内に注湯して,射出・充填することで,充填途中の湯流れ状態などを確認する方法です.この方法で,金型キャビティでの溶湯の充填順序 の確認や,未充填,湯じわなどの湯流れ欠陥の発生箇所の確認などが可能です.
以前は,射出ピストンの前に加熱して柔らかくしたビスケットを挟んでピストンが分流子に直接衝突することを防止するなどの工夫が必要でした.しか し,今日のダイカストマシンは,射出制御技術が進歩してきており,射出を途中で止めることができるので,ショートショットはかなりやりやすくなっていま す.
ちなみに,射出成形では,ショートショットは成形品の一部が欠けや不完全な形状の成形品を生ずる現象のこと,つまり充填不足のことをいうそうです.