アルミニウム合金シリンダーヘッドの熱処理(T7)の溶体化処理後に表面が黒色化します.解決の糸口が見つからず困っています.事例や解決法がありましたらお願いします
筆者自身はAC4B-T6材で黒色化現象の経験があり,この範囲の回答でお許しください.当時の現象は,溶体化処理(電気炉500℃設定)直後で鋳肌の一部に黒色化が発生.調査の結果,①Mgおよび低融点元素の粒状複合酸化物があり,それが黒色.その要因として,②溶体化温度未満で固相の一部が溶解している.③炉内の酸素分圧が高い.これらの条件がそろった場合に発生すると考えました.以下に説明を加えます.
①黒色化部表面のSEM-EDS観察で,Al-Mg-(Si)-(Cu,Sn,Pb)系酸化物の粒状物質が認められた.溶体化温度以下の融点を持つSnとPbの製品中の濃度はそれぞれ多くても200ppmと450ppmで,これら元素は粒状物質中に濃化していた.
②詳細な熱分析の結果,497℃で吸熱反応が認められた.SEM観察で粒状に見えたのが局所的な「しみ出し」の痕跡とすれば,微小領域で溶解(バーニング)の可能性はある.
③ガス加熱炉で溶体化処理をしたところ,黒色化は発生しなかったことから,雰囲気は影響すると推定.ただし,ガス炉と電気炉の雰囲気酸素分圧の測定はしていない.
ご質問はAC4C材であり,水没部のみが黒色化している等,私の経験とは異なりますが,ご参考になれば幸いです.
(『鋳造工学』94巻12号掲載)