アルミニウム合金中に存在している水素量を測りたいのですが,どのような方法がありますか?

 アルミニウム合金中の水素量の測定で良く使われているものを紹介します.
 減圧凝固法は,減圧化でアルミ溶湯を凝固させるとガス量が多いほど膨らむことを利用した測定方法で,膨らみ具合をガス量が既知の標本と比較するか,密度を測定してガス量を測定します.イニシャルバブルは,アルミ溶湯を減圧すると,水素ガス気泡が浮き上がることを利用して,そのバブルが発生した時の圧力と温度から水素量を求めることができます.水素ガスセンサータイプは,水素濃淡電池が起電力を発生することを利用した測定方法で,センサーを溶湯中に浸漬させ,連続測定することができます.真空溶融抽出法(ランズレー法)は,溶湯をCu鋳型で急冷した試験片を,真空中で溶解し,水素透過前後の圧力差でガス量を求めることができます.パラジウムの温度が上がると水素を透過する性質を利用したものです.不活性ガス気流融解熱伝導度法は,窒素ガス気流下で,Cu鋳型で急冷した試験片を黒鉛るつぼ中で融解し,不活性ガス中に抽出したガスを熱伝導度セルに導き,水素による熱伝導度の変化により水素量を測定できます.それぞれの方法は一長一短ですので,目的に応じて測定方法を選択することが望まれます.

(『鋳造工学』96巻1号掲載)