ダイカスト金型を設計する上で考慮しなければならない重要なことはなんで しょうか

 ダイカストにおける設計工程には,大きく分けて製品設計と金型設計の二つがあります.

製品設計は,客先の製品形状をダイカストで生産できるような形状に図面化することが目的です.型分割・スライド中子・入子(埋子)・鋳抜きピンなどの設置,ゲート・押しピンなどの位置・大きさなどの型構成に関する項目と,肉厚・角部R(フィレット)・抜き勾配・鋳抜き穴・リブ・フィンなどの大きさの設定,鋳肌・塗装・メッキなどの製品表面処理などの製品形状に関する項目とを客先と相談しながら決定・図面化する工程です.

金型設計は製品設計で決定した型構成,製品形状を基にダイカスト生産する金型を製作するために必要な金型の構造・機構などを図面化することが目的です.潜在的なダイカスト内部欠陥を抑制するためのCAE解析,製品の取出しから常温に冷える間での縮み代(熱収縮量)の設定,ゲート・ランナー・オーバーフロー・エアベント(ガス抜き)などの湯口方案の設定,鋳造圧力での金型変形を防止する型剛性,金型温度管理する内部冷却穴の配置,金型表面処理方法などを具体的に決定・図面化する工程です.品質,生産性,コストへの影響が大きく,製品要求機能,品質安定維持性,鋳造条件,耐久性,金型製作コスト・作りやすさ,メンテナンス性なども十分に考慮した設計にする必要があります.

金型の機能は,形状・寸法付与機能と熱交換機能の二つであるので,1)製品の寸法精度とその維持のための金型故障の防止や型寿命延長,2)内部冷却設計による品質(焼付き,ひけ巣,割れなど)の安定と維持に関係するものが,金型を設計する上で特に重要です.

(『鋳造工学』89巻4号掲載)