ヨーロッパでは30年前からワイヤー球状化処理が用いられていますが,日本では最近どうなっているのでしょうか?

日本でも近年,鋳鉄の球状化処理のためにワイヤー法が注目を集め,採用,または導入を検討する鋳物工場が増えています.それには下記の理由があると思います.

第一に『処理装置の発展』です.爆発的な球状化処理反応にも耐えうる装置が開発されMgワイヤーのHi-Mg化が進みコスト低減可が進みました.第二に『作業環境の改善』です.作業現場改善への意識が年々高くなってきています.また労働者確保のためにも働きやすい環境が求められる時代へと移り変わっています.ワイヤー法であれば球状化処理時に局所集塵が可能となりMgの煙が工場内で蔓延することはありません.また球状化剤,カバー材を処理鍋にセットする必要がなくなり,労働者の負荷低減にも繋がります.第三に『送線技術制御の発展』です.パソコン技術の進歩により比較的安価に様々な制御が可能となりました.また送線履歴,異常履歴等が自動保存されトレーサビリティが容易となっています.

しかし全てにおいてMgワイヤー法が優れているわけではありません.球状化処理の特徴をよく理解し,工場の将来像を見据えた操業に最も適した処理方法を選択していくことが理想といえます.

(『鋳造工学』90巻4号掲載)