海外産のダイカスト合金を使用しだした頃から,流動性が低下しだし,湯周り不良が多発するようになりました.合金成分的には問題無いと思っていますが原因がわかりません.何が原因なのでしょうか?

流動性の低下には大きく分けて2つの原因があります.ひとつは,酸化物の混入です.高い温度で溶解してしまうと,空気中の水分と反応してしまい,溶湯中に酸化物が浮遊します.またこの酸化物は空気との相性もよく酸化物に空気が付着してしまいます.これらの溶湯は粘性が高い状態になります.海外産の合金で十分なフラックス処理が行われないで再生塊になった場合には,酸化物の多い2次合金であると言えます.

 2つ目はダイカスト用合金の化学成分以外の微量元素の影響です.2次合金であるダイカスト用の合金成分は主要な化学成分以外の規定がなく微量の元素が入っても測定されない場合があります.特に金属ケイ素に付着して混入するカルシウムは,微量であっても粘性を著しく悪くします.カルシウムの入ったダイカスト品の肌はがま肌になる特徴があります.

 上記一つ目は,組織観察で非金属介在物として捉えることが可能です.2つ目の場合には,組織観察でAl-Siの共晶相が改良(微細化)されています.詳細な分析を行えば,カルシウムも分析されると思います.どちらも専用のフラックス処理で解決できますので,原因を掴んで,適切な処理を行ってください.

(『鋳造工学』87巻8号)