片状黒鉛鋳鉄の引張りと圧縮の機械的特性は,どう違いますか?また,疲労試験において圧縮成分を含む試験を行った場合(応力比R<0),注意するべき点はありますか?

引張強さは鋳鉄の材質を表わす目安となっていることはご存じかと思います. JIS G 5501ではねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)の引張強さは,100〜350MPaとなっています.

圧縮試験は引張試験ほど頻繁には行われませんが,延性金属の 塑性加工性の判定や鋳鉄,コンクリートの様に脆い材料では行われることがあります.通常,引張応力はき裂を開口し,圧縮応力はき裂を押しつぶし閉口させる 作用があり,延性にやや乏しい材料においては,圧縮破壊応力は引張破壊応力よりも大きくなります.片状黒鉛鋳鉄では圧縮強さは引張強さの3〜4倍に達し, 引張強さの低い鋳鉄ほど,その比が大きくなるようです.

応力比R>0で行う疲労試験(引張-引張)を片振り試験というのに対し,応力比R<0で試験を行う疲労試験(引張-圧縮)を両振り試験と呼びます.両振り 試験ではR=-1(最大引張応力と圧縮最大応力が等しい)で行われることが多く,回転曲げ疲労試験がよく知られています.

丸棒や板で疲労試験片を作製し, 軸方向に繰り返し荷重を負荷し,疲労試験を行う報告もありますが,負荷する応力や試験片の断面積,ヤング率,試験片の長さによっては,「坐屈 (Buckling)」と言って,ある荷重で急に変形の模様が変化し大きなたわみを生じてしまう場合があり,注意が必要です.