鋳鉄の溶湯処理で,フラックス処理・接種処理・球状化処理は同時にやらないのは何故ですか?

それぞれの処理に以下のような役割があり,同時処理ではそれぞれの効果が十分に発揮できないからです.また,処理効果は経時変化により減衰していく(フェーディングする)ものです.処理時間の経過で質が変化するという点では,鋳鉄溶湯は生ものといえるかも知れません.

フラックス処理は,あまり聞かないものですが,元湯の性状を一定にするための処理と考えられます.元湯S%の調整には脱硫処理や加硫処理で溶湯中のS% を,脱酸処理では溶存酸素量をある量以下に低減させます.窒素ガスが悪さをするときは,Zr,Al,Ti(片状黒鉛鋳鉄のみ)など窒素と仲の良い元素を含 有する合金を添加します.これらは,接種処理や球状化処理の前に行われます.

片状黒鉛鋳鉄の接種処理は,一定性状にした溶湯の黒鉛化(溶湯から黒鉛を晶出させる)を促進させると共に共晶セル数を増加させA型黒鉛を得るための処理です.

球状黒鉛鋳鉄では,溶湯中で球状黒鉛が作られる環境を作る球状化処理後に接種を行い,黒鉛化を促進させて黒鉛粒数を急増させます.これにより引け傾向やチ ル化傾向が低下し健全な鋳物を造ることが出来ます.

このような順序は,電気炉熔解の原料投入順序や料理の味付けの基本「さしすせそ」にも通じるでしょう.先人の経験の積重ねや実験・研究結果に基づく現状 では最良の知恵です.しかし,環境が新しくなれば,変わる事もあります.常に新たな発想とその実証を怠らずに良い製品を作ってください.