球状黒鉛鋳鉄の黒鉛はどうして球状になるのですか?

これまでのところ球状黒鉛鋳鉄の黒鉛がどのようにして球状になるのかについて統一された理論にまでには確立されていません.

(i)核説(ii)過冷 説(iii)表面エネルギー説(iv)吸着説(v)転位説(vi)気泡説など,いくつかの学説が提唱されていますが,製造現場で球状黒鉛鋳鉄製品を鋳造し てきた回答者が理解している考え方を紹介します.

鋳鉄は鉄と炭素,シリコンを基本に硫黄,燐など鉄源から含まれる元素や多種の合金元素から構成されている.原材料を溶かす,鋳造するといった鋳造工 程を物理現象として捕らえるには,溶融と凝固という固体と液体との相の移り変わりを考えることになる.更に球状黒鉛鋳鉄に関しては材料を溶かして,凝固さ せるまでに球状化処理を行う.

純Mgを直接溶湯に添加する方法や合金化されたMgなどを添加することによって黒鉛を片状から球状に変化させることが出来る.しかしその過程を説 明するには,溶湯から黒鉛が生成するという液相から固相が晶出する現象と溶湯が段々と凝固していく時間を追って変化する固相と液相の割合の変化を考える.

鋳鉄溶湯から黒鉛が晶出してくるというのは凝固の過程で液体の鉄に溶け込んでいられない炭素が純物質に近い黒鉛になるということである.更に球状 になるというのには溶湯という液体中では異物質の黒鉛に対してあらゆる方角から力がかかる.よって黒鉛は表面積の最も小さな球状になると考えられる.また 最初に炭素が液体から出て来るにはきっかけが必要なはずである.

液体に溶け込んでいない不純物や高融点物質があれば,液体とその物質との界面には原子レベ ルのわずかな空隙ができそこを起点に炭素が凝集を開始して成長すると考えられる.もちろん成長しようとすると上記のような液体からの力が働き球状になる.

また凝固中に出来た空隙も上記同様に球体となりやすく,温度低下とともに溶けきれなくなった炭素が黒鉛として晶出する.またそれに伴い周囲に分子同士の摩 擦熱を発するので冷却時の過冷を打ち消すように潜熱の放出が起こる.球状黒鉛鋳鉄の判定を熱分析で行えるのはこれに基づいている.

因みに,凝固中に黒鉛が丸くになって生成してくるのか,途中から丸くなるのかをその場で観察して見極める最先端の研究が現在も行われています.