砂型鋳物の熱処理条件と機械的性質について,JIS H5202アルミニウム合金鋳物やJIS H0001アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金ー質別記号を参考にしようとしていますが,熱処理温度及び時間の条件についての記載がありません.AC4CH-T61の砂型鋳物の熱処理条件と機械的性質は,何に従うのが正しいのでしょうか.
ご質問のように,JIS H 0001「アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金−質別記号」および同規程の解説,ならびにJIS H 5202「アルミニウム合金鋳物」には,AC4CH砂型や金型鋳物に関するT6やT61処理およびそれらの機械的性質が明示されていますが,具体的な熱処理条件については記載されていません.また複数の書籍において,「鋳物合金で利用される熱処理は,基本的には展伸材における熱処理と同様である」旨の記載が散見されます.以上から,熱処理条件は展伸材で先行整備されていますが,鋳物については整備が遅れている現状が推測されます.一方で,先人の弛まない努力により鋳造欠陥を著しく低減した健全な鋳物組織が得られるようになった現在,適切な熱処理の付与を通じて鋳物の価値を一段と高めることが大きに期待されていますので,近い将来,鋳物の熱処理条件の整備が進むものと示唆されます.
以上,状況説明させていただきましたが,ご質問「何に従うのが正しいのでしょうか.」の関連情報としては,「アルミニウムハンドブック第7版:社団法人日本アルミニウム協会」において,「鋳物の標準的熱処理条件」という位置付けで,AC4CH合金(砂型および金型鋳物)に関するT6及びT61熱処理条件が示されています(p.11,表1.6.4).ご参照ください.
(『鋳造工学』97巻9号掲載)