自動車のマルチマテリアル化が進んでいますが,鉄系鋳造材料の利用が必須である部品はありますか.
近年,カーボンニュートラルのための方策が検討され,自動車では,電動化とともに,軽量化が大きな課題となっています.軽量化のためには,軽量材料に材料置換をしていくということも重要な方策となり,高密度の鉄系の材料は減少していく傾向にあります.
材料にはそれぞれ特徴があり,すべての部品を同じ材料で賄うわけにはいきません.鉄系の鋳造材料は,高密度ですが,高強度,高延性,耐熱性,耐摩耗性などの特徴を有します.また,形状自由度が高く,安価に入手することができます.従って,そのような特徴を活かせるような部品への適用が考えられます.小型車のサスペンション系の部品や種々のシャフト類などへの適用の可能性があると思います.また,耐摩耗性を活かして,歯車なども検討してもいいかもしれません.これらの部品に適用するためには,高強度や高延性といった特徴を更に高める必要はあると思います.
製造過程でのカーボンニュートラルも重要になってきます.アルミに比較して鉄系鋳造材料はこの点では有利になります.今後は,自動車の製造工程から,走行時,廃車にするところまでのCO2排出量を考えたうえで,どの材料を適用していくのかを検討することが重要です.
(『鋳造工学』94巻4号掲載)