薄肉のダイカスト品を作ろうと思います。薄肉品の湯道設計で何に注意して設計すればよろしいのでしょうか?
ダイカストの肉厚は,合金種や製品の大きさにもよりますがADC12の大物では2~6mm,小物では0.8~3mmといわれています.さらに薄肉化をすると湯じわ,湯境,未充填などの湯流れ欠陥を発生しやすくなります.これらの欠陥は,流動過程中の溶湯温度の低下による固相率の増加,キャビティ内の空気の圧縮による背圧などによって発生します.これらを防止するためには,(1)溶湯温度が凝固開始する前に充填を完了させる,(2)キャビティ内の空気をできる限り排気する,ことが大切です.
(1)に関しては,許容充填時間以内に充填を完了させる必要があります.許容充填時間は様々な計算式が提案されていますが,最も簡単な式はG.Ulmerの式でt=0.033x2(t:充填時間,x:肉厚)を用いて計算します.充填時間を短くするためには,プランジャーチップ径を大きくしたり,射出速度を速く設定したりしますが,ゲートを変更せずに速度を上げるとゲート速度も速くなり,金型損傷を招くので,ゲート断面積はできる限り大きく設定し,ゲート速度を抑えます.また,ファンゲートやオーストラリアンゲートなどを採用するとスムーズに溶湯を充填できます.ランナーは急激な流れ方向の変化は避けてスムーズに溶湯が流れるようにし,さらにゲートに向かって徐々に断面積を減少する増速型にするとよいでしょう.また,ランナーの厚さと幅の比は1:4以上がよいといわれています.
(2)に関してはチルベントなどを用いてエアベントの断面積を広くとります.また,真空吸引すると効果的です.
その他,オーバーフローは金型の保温のため,小さなものを多くつけます.しかし,トータルの体積が大きすぎると充填完了後の昇圧が遅れるので注意しなければなりません.