軽量化のためにマグネシウムダイカストを使用したいと思っています。エンジンのそばの部品のカバーですが、どのようなことに注意して設計すれば良いでしょうか?

 マグネシウム合金は実用金属の中で最も軽量な金属であり,鉄鋼材料やアルミニウム合金からの置き換えで,軽量化を図ることができます.しかし,機械的性質などの材料特性が異なるため,注意する必要があります.カバー類であれば,一般的にAZ91D合金が用いられます.しかし,AZ91D合金においては高温クリープが生じ,耐熱性がアルミニウム合金などに比較して劣るため,その部品の温度環境により材料選定をする必要があります.150℃を超える温度となるような部位への適用であれば,AS系などの耐熱性の高い合金を選定しなければなりません.また,ヤング率が低いため,剛性向上のためにリブなどを設置する必要があります.マグネシウム合金自体の耐食性は高いですが,他の金属と接触するとガルバニック腐食を起こすため,塗装等で接触面を絶縁するような構造にする必要があります.

 一般的なダイカスト用アルミニウム合金のADC12と比較すると,凝固温度範囲が広く,ひけ巣や凝固割れが生じやすくなります.できる限り肉厚差をなくすような設計を行い,鋳造欠陥が出にくい形状とすることが重要になります.

(『鋳造工学』87巻12号掲載)