部品設計を担当しており,鋳造領域は素人です.約400×200×80mm,肉厚5~20mmのAC4Cの重力鋳造で,部品ごとに素材寸法が異なり,3mm程度のバラツキが発生しています.注湯後に凝固するまでの時間は鋳造機に設定してあるのですが,押しピンで浮かせるタイミング,型から取り出すタイミングは作業者まかせになっています.まだ製品が熱いうちに離型をしますが,その時に変形することはありませんか? また,T6処理をするときの部品の置き方(上向き、下向きなど)の違いで変形の方向,大きさが影響することはありますか?

ご質問の文面から金型鋳造品と察します.また寸法変化は,伸び縮みによる製品全長の寸法変化と,曲がり等の変形とで原因が異なりますが,ご質問では押し出しピンで浮かせるタイミングの違いを気にされているようですので,ここでは曲がり変形を想定して回答をいたします.
押し出しピンによる曲がり変形は,抜型時に,製品が金型にかじりつくことによって起こります.金型を包みこむような形状の製品で,取り出し時の製品温度がおおよそ400℃を下回ると,製品が金型に食いついて抜型時に製品を変形させてしまうことがあります.この場合,製品にかじり跡がついたり,押し出しピンが製品に食い込んだりします.この原因は,抜型するタイミングが遅すぎる場合と,設計上,元々抜け勾配が足りない場合があります.
かじりがない場合は,冷却収縮に伴う熱変形が疑われます.熱変形は金型から取り出した後の冷却中の鋳物内部の冷却時間差によって生じます.一般的には,肉厚が薄く,温度の低い部分が先に冷えて収縮し,そのあと肉厚の熱い部分が遅れて冷却,収縮することによって局所的な応力が発生し,その応力が先に冷却された部分を引っ張る形となって,鋳物を変形させます.この要因は,
1.肉厚差が大きいこと
2.金型の取り出し時に鋳物内部の温度差が大きいこと
3.局所的な応力を生じさせる形状であること
の3点です.
ただし,1,2の要因があっても,3の形状要因がない場合,大きく変形することは少なく,1,2,3の要因が複合的に発生していることが考えられます.対策には,製品形状の見直しが最も有効ですが,金型冷却によって抜型時の製品内部温度差を小さくすることでも変形を小さくできる可能性があります.

(『鋳造工学』96巻3号掲載)