鋳造関係の専門書では、鋳物の組織として柱状晶や等軸晶の結晶が生成すると書かれています。論文などで示されている組織写真には初晶や共晶組織(黒煙や炭化物)などがありますが、これらの組織は結晶粒中にどのように存在しているのでしょうか。

鋳鉄の共晶凝固では、オーステナイトと黒鉛が共晶セルと呼ばれる集団を作っています。共晶セル内では黒鉛片が分岐を繰り返し、その間を共晶オーステナイトが埋めて存在しています。共晶セルは全体としてみれば球体ですが、融液中には多数晶出して凝固が進行し、共晶セルがお互い接触して融液がなくなったときに凝固は終了します。通常、顕微鏡で観察される黒鉛組織は、下図に示した断面(円内)に相当します。また、共晶セルは、鋳鉄が共晶凝固するときの核生成・成長の単位となっていて、接種のような不均質核生成を促進するような処理を促進するような処理を施すと、共晶セルは小さくなり、共晶セル数は増加します。