鉄系材料では,フェライト,オーステナイト,ベイナイト,マルテンサイトなどの組織の違いによって,どれくらいビッカース硬さやロックウェル硬さに違いがあるのでしょうか.
鋳鉄の基地組織は,フェライト,オーステナイト,パーライト,ベイナイト,マルテンサイトの順に硬くなります.材料の硬さは,それぞれの組織構成で異なりますが,フェライトのブリネル硬さは90~150HB程度,パーライトのブリネル硬さは200~240HB程度,オーステナイトのブリネル硬さは110~250HB程度,ベイナイトのブリネル硬さは240~280HB程度(ビッカース硬さ300~450HV程度),マルテンサイトのブリネル硬さは280~420HB程度(ビッカース硬さ570~850HV程度)です.なお,ASTM E140を準拠するとブリネル硬さとビッカース硬さの換算式は,HB=18.799+0.73854HV+7.7886×10-4HV2-9.3938×10-7HV3,ロックウェル硬さとビッカース硬さの換算式は,HV=590.35+3.888HRC exp(0.05134HRC0.9073)が示されています.また,目安として,ビッカース硬さ(HV)≒ブリネル硬さ(HB),ロックウェル硬さ(HRC)≒ 0.1×ブリネル硬さ(HB)+3とすると比較ができます.
参考文献:新版 鋳鉄の材質,日本鋳造工学会(2014)33
(『鋳造工学』93巻8号掲載)