T7熱処理をすると,ワレが発生しました.対策はどのようなものがありますか?

例えば,シリンダヘッドのように,形状が複雑でクエンチ時に残留応力が生じやすいものなのか,原因はものによると思います.

まず,クエンチ時に残留応力が 発生すると考えて良いと思います.しかし,その時点では割れていないので,析出による寸法変化が鋳物の形状によって拘束され,引張応力を増長したのかもし れませんが,はっきりとしたことはわかりません.

また,析出によって硬さが増すと溶体化直後より延性が低下すると考えられるので,欠陥敏感性が高くなるこ とも考えられます.歪みゲージを貼って,逐次破断などで残留応力の状況をみつつ,FEM解析などでクエンチ時の応力解析を行い,安定化処理前の応力状態を みておくことが良いと思います.処方箋としては,割れ箇所が角部やコーナー部の場合,R処理が忘れられていないか? または適切なR処理がされているか?  をチェックしてください.

形状変更が可能であるならば,Rを大きくしたりリブを追加したりすることで割れを抑えることが可能です.設計変更が難しいのな らば,クエンチをマイルドにする温水や油冷により冷却速度をおとすといったことが考えられます.これによりクエンチ時に発生する残留応力を緩和出来るかも 知れません.クエンチ時に部品の中に空気だまりがあって,焼き入れにムラがでていないかもチェックした方がよいかと思います.