ADC12合金のダイカスト品の湯口を折ると製品まで欠けこんで不良が出来てしまいます.破面が平らになっている部分が見受けられます.原因と対策は?

 欠け込み不良の原因として,破面が平らになっている部位があるという事から,初期凝固片(破断チル層)や溶湯酸化膜等の噛み込みが,主因として推察されます.特に,初期凝固片(破断チル)は,スリーブ内に溶湯を給湯したときに,スリーブ壁との接触面で形成された凝固層が,射出と共にプランジャーチップにより破壊されて断片化したもので,それが溶湯に運ばれて湯口付近に残留すると,その部位の強度が低下するため,湯口を除去する時に,製品まで欠け込む原因となるものです.発生を抑制するには,スリーブを保温したり,断熱性の高いスリーブを使用したり,スリーブ内の溶湯充填率を上げるような発生防止策が考えられます.又,混入を抑制するために,湯道や,ゲート形状を工夫する対策も考えられます.一方で,発生源対策ではなく,ノッチをつけて湯口の折り位置を誘導したり,折り位置の拘束を確実にしてから折るなどの工夫により,欠け込み不良を抑制する事例も存在します.適切な対策を試みてください.(『鋳造工学』87巻11号掲載)