FCD材の疲労試験において,回転曲げと平面曲げの疲労限度はほぼ同じ値でしょうか?もし,異なるのであればどちらの値が高く示し,それはなぜでしょうか?

回転曲げ疲労試験とは,一定の曲げモーメントを作用させた丸棒を回転させ,試験片平行部の表面に繰返し,曲げ応力を負荷させる疲労試験です.また,平面曲げ疲労試験とは,平板試験片に繰返し曲げ応力を負荷する疲労試験のことです.どちらの疲労試験も一般的によく行われますが,試験機の特性から試験片の形状が異なります.回転曲げ疲労試験は平行部を有するもしくは砂時計型の丸棒形状であるのに対して,平面曲げ疲労試験は板材です.

 いずれの試験も引張−圧縮による応力比-1の両振りの疲労試験ですので,平均応力は0であり,負荷応力が応力振幅となり,理論上,疲労限度は等しくなります.しかし,FCDなどの鋳造材では,疲労限度に及ぼす影響因子は,以下の様な要因が考えられますので,実際の試験結果では,疲労限度に違いが見られる場合もあります.

(1)試験片の危険体積の影響

危険体積とは,試験片中の繰り返し最大荷重,最小荷重が負荷される部分のことです.疲労き裂は危険体積中に存在する最大の欠陥(引け巣など)から発生すると言われております.すなわち,危険体積が大きくなれば,寸法の大きい欠陥の存在する確率は高くなり,疲労限度は小さくなることが予想されます.

(2)表面粗さの影響

疲労試験は試験片の表面粗さ,すなわち表面の凹凸が,応力集中により,破壊起点となります.鏡面仕上げにすると疲労限度は向上します.

(3)残留応力の影響

疲労き裂進展のメカニズムは,引張・圧縮応力によるき裂開閉口の繰返しであり,外力以外の残留応力にも影響します.一般にショットピーニングの様な試験片表面に圧縮残留応力を付与して,疲労限度を大幅に向上させる方法が知られていますが,このような表面改質処理をしなくても,試験片加工や熱処理によって残留応力が発生し,それらが疲労限度に影響を及ぼすことがあります.

(『鋳造工学』88巻6号)