Fe-C系状態図中の言葉の意味を教えてください.平衡状態図,初晶,共晶,共析,液相線,固相線,A1変態点,A3線,Acm線などイメージがわきません.
一般に平衡状態図とは,横軸に組成(含有量),縦軸に温度を取り,ある組成の溶液や合金などが,ある温度でどのような状態で存在している示す地図と考えると解りやすいでしょう.
そこでFe-C系複平衡状態図は,実線のFe-Fe3C系(準安定系)と点線のFe-C系(安定系)で表されています.炭素鋼では,FeとFe3Cの2相ですが,鋳鉄ではFeとFe3Cと黒鉛の3相になっています.
0.4mass%C 組成:Xの鉄-炭素合金を,高温均一融液状態(液相)からゆっくり冷却すると,AB線と交差します.この線を液相線と呼び,液体中に固体(固相)が現れる(晶出)始める温度を示しています.また,溶融金属から初めて晶出する結晶(固相,固体)を初晶といいます.さらに温度が低下するに伴って固相が増加し続け,JE線と交差します.この線を固相線と呼び,全てが固体(固相)となる温度を示しています.ここでは全てγ鉄(固相,オーステナイト鉄)になります.さらに温度が低下するとGS線と交差します.この線をA3線と呼び,γ鉄からα鉄(フェライト)が析出(一つの固相から別の固相が現れること)し始める温度を示しています.さらに温度低下に伴いα鉄は増加し続け,PS線の温度(727℃)になったとき,残っているγ鉄は,α鉄(フェライト)とFe3C(セメンタイト)に相変態します.この変態が起こる温度をA1変態点といいます.この反応は,1つの固相から異なる2つの固相が共に析出する(同時に現れる)ので,共析反応といいます.
1.0mass%C 組成:Yの合金を1000℃のγ鉄からゆっくり冷却すると,ES線と交差します.この線をAcm線と呼び,γ鉄からFe3C(セメンタイト)が析出しはじめる温度を示しています.ちなみにcmはセメンタイト(Cementite)のことです.
3.5mass%C組成:Zの合金を,高温均一融液状態からゆっくり冷却すると,BC線(液相線)と交差します.この温度で融液からγ鉄が晶出し始めます.さらに温度が低下するとE’温度(1153℃)で,残っている融液からγ鉄と黒鉛(G)が晶出します.この反応は,液相(液体)から2つの固体が共に晶出するので,共晶反応といいます.
(『鋳造工学』88巻11号)