HPDCにてオーバーフローを設計する際の考え方はありますか?
オーバーフロー(以下,O/F)の機能には一般的に①溶湯充填時にガスや酸化物,介在物などを含んだ溶湯を製品部に残留させないよう排出する機能と,②金 型の特定部位の温度を上昇させるためのスポットヒーター機能とがあります.
まず,①の機能についてはO/Fの溶湯の入り口(O/Fゲート)が薄いと介在物が十分排出できないことがありますので除去方法と製品形状,肉厚が許容す る範囲でできるだけ厚くすることが望ましいです.ただ過剰に厚いと製品への欠け込みなどが発生しますので注意が必要です.またO/Fゲートの総断面積は ゲート断面積の50%程度を目安にするとよいと言われています.
配置については,基本的には大きなO/Fを少数設けるよりは小さいO/Fを多数設けた方が 良いとされています.詳細は(社)日本ダイカスト協会刊行の「ダイカストの標準 DCS-D1金型編」の記載内容をご参考ください.体積については狙うべ き溶湯の排出体積を製品から割り出し,まずはそれにならうことが良いと思います.
次に②ですが,これは比較的高度なテクニックです.ゲートから遠い製品端部などは型温も上昇しにくく,湯回りも悪化しがちです.型温を上昇させるには金 型にヒーターを入れるという手もありますが,設備等の費用がかかります.その場合,O/Fの熱量を利用することで比較的安価に改善することができます.
金型を暖めたい範囲に1つ若しくは複数のO/Fを配置すると良いでしょう.過剰な場合,型温の過熱による製品のひけ巣発生に注意が必要です.
O/Fへはエアベントを設置することがあります.その場合、O/Fに溶湯が充填完了直前までエアベントが開口し続けるようにエアベントの位置を工夫する のが良いでしょう.