JIS規格の材料記号における数字は,機械構造用炭素鋼は含有される炭素量で表示されますが,鋳鉄や鋳鋼では何故引張強さで表示されるのでしょうか.例えば,FC200を作製して,引張強さが250MPa以上あった場合は,FC250と称しても問題ないのでしょうか.
材料のJIS規格は材質(性質)の規格と化学成分の規格に大別されます.例えば,炭素鋼では機械構造用炭素鋼(S[炭素量×100]C材)や炭素工具鋼(SK[炭素量×100]材)は前者であり,一般構造用圧延鋼(SS材)は後者です.SS材に付記される数値は引張強さであり,この強度が保証されます.鋳鉄の場合も同様に,設定されたJISの強度を保証しなければなりません.鋳鉄や鋳鋼の材質は鋳込む製品の肉厚など鋳造条件によって変動するため,JISでいう受渡当事者間の協定で詳細が決められます.つまり,JISには化学成分を規定して材質を変動させる表示ができないと思われます.製造現場における技術者の知恵と工夫が活かせると考えればよいでしょう.JIS規格を見る場合には何年版のものか,工業的背景から必要に応じて改正がなされ,その経緯は「解説」に記載されますので,定期的に最新のJISを入手することが重要です.ご質問のねずみ鋳鉄の場合,引張試験をして250MPa以上であれば,FC250としてもよいことになります.なお,鋳鉄系における化学成分の規格は「G5503オーステナイト鋳鉄」と「G5504低温用厚肉フェライト球状黒鉛鋳鉄(材質も規定がある)」であり,他の鋳鉄のJISは材質の規格です.
(『鋳造工学』94巻3号掲載)