ADC14合金を初めて使用しようと思いますが,特に気を付けるべきことはなんでしょうか.通常はADC12合金を使用しています.
ADC14合金はSiを約17%含有する過共晶Al-Si合金で,Siの凝固潜熱がAlに比べ20%多いため,鋳造性が良好で,ADC12合金と同じ方法で鋳造できます.但し,液相線温度が650℃とADC12合金に比べ,約70℃高いので,溶湯温度を高くする必要があります.またダイカスト品に晶出する初晶Siの結晶が加工性を阻害したり,機械的性質を低下させる問題があり,初晶Siの粗大化を防止する必要があります.P化合物などの微細化材の添加とスリーブ中で初晶の成長を防止するため注湯温度を高くする工夫などが必要です.なお鋳肌部に初晶Siが晶出しないフリーゾーンが存在するので,耐摩耗機能が鋳肌部に要求される場合は,注意が必要です.
(『鋳造工学』92巻3号)