FCDの黒鉛球状化率算出について質問です.JIS G5502では100倍の顕微鏡画像5視野から球状化率を算出することになっていますが,視野の広さについて記載がありません.正しく算出するためには少なくともどれくらいの広さの視野について観察するべきでしょうか?
画像解析装置が普及し,黒鉛球状化率が「金属顕微鏡-CCD(CMOS)カメラ-画像解析ソフト」(画像解析装置)により算出される現状において,今回の質問はシンプルですが重要です.
現行のJIS G5502での黒鉛球状化率測定条件は,倍率x100で5視野としか規定されていません.5視野は,測定値が安定する最小数と述べられていいます(詳しい経緯は,鋳物40(1968)148を参照).視野面積についての規定は無く,写真は手札版(92x71)と記載されているので,一視野の面積は6532mm2÷100x100=0.6532mm2,5視野だから3.266mm2と推定されます.
さて,画像解析装置の場合は,対物レンズの倍率,リレーレンズの倍率,CCDカメラの画素数などが関係するので,顕微鏡レンズの対物×接眼の倍率と写真面積でとはいきません.そこで,画像解析ソフトを立ち上げ,測定試料の黒鉛球状化率を測定する条件で金属顕微鏡用マイクロスケールを画面上に取り込みます.画面上でのスケールの長さをソフトに入力します.これにより取り込んだスケール長さと画素数(ドット)との換算が行われるので,1ドットの長さがソフト上に記録され,同時に1ドットの面積が計算されます.次に1ドットの面積とCCDカメラの1画面の画素数から視野面積が決まるので,2値化された1視野に存在する全黒鉛粒子の数,個々の粒子の黒鉛面積と外接円の面積,さらにこれらの比である黒鉛形状係数が計算・分類され,結果として黒鉛球状化率が算出されます.使っている画像解析装置の1視野面積を計算されるとよいでしょう.
以上,画像解析装置による黒鉛球状化率を測定する種々のファクターについて説明しましたが,CV黒鉛鋳鉄品のJIS G5505-2020に「最小視野面積は,4mm2以上が望ましい.測定する画像のピクセルサイズは1μm未満が望ましい.」と規定されています.
(『鋳造工学』93巻2号掲載)