最近,展伸材などでは摩擦攪拌接合法(FSW)が用いられています.この方法によるアルミニウム合金ダイカストや鋳物への接合の適用例はありますか.また,適用する場合に特に問題はありますか.

 FSW(Friction Stir Welding)は,接合する材料同士を密着させた状態で固定し,接合ツールを回転させながら接合する材料表面に押し付けることにより,摩擦熱で軟化した材料の塑性流動により固相接合させる技術です.ミグ溶接よりも電気代やランニングコストが低く,異種材料同士の接合も可能なことから,アルミニウム,マグネシウム,銅などの接合に使われています.

 鋳物での適用例はあまり多くないようですが,ホンダの乗用車のサブフレームに使われています.これは,アルミニウム合金ダイカストとスチールのプレス材の異種材接合で,ガルバニック腐食対策のために,材料の間にシール材を挟んで接合するもので,軽量化とコスト低減及び省エネルギーが図られています.ホンダでは,接合装置,ロボット,治具,非破壊検査装置等の開発を行い,量産に成功しています.

 鋳物やダイカストに適用するときに特に問題となるところはないと思いますが,接合部同士を密着させるため,素材の寸法精度を高くする必要があります.また,接合ツールを高圧力で押し付けますので,それを受けることのできる鋳物の形状や設備,治具等が必要になります.

                                                         (「鋳造工学」93巻9号掲載)