球状黒鉛鋳鉄において黒鉛の形状(球状化や黒鉛粒径)の違いが機械的性質に及ぼす影響について教えてください。
球状黒鉛鋳鉄材は、鋼に匹敵する機械的性質を示すこと、また熱処理によってもその基地組織を制御させることが可能なことから、広範に構造材として利用されています。
しかし、基地中に存在する球状黒鉛は、基地組織との化学的な結合はほとんど存在しないために、圧縮応力の作用する箇所では圧粉体として抵抗力を示す一方で、引張応力下においては、球状黒鉛と基地の界面では有効断面積が減少し応力集中を引き起こすこととなり、鋼材に比べて引張強さ、降伏点(0.2%耐力)、伸びは低下する傾向となります1)。
従って、黒鉛球状化率が低いとその分、基地の連続性が減少することとなり、基地の有効断面積を減少させることに繋がるため、片状黒鉛<CV<球状<鋼基地の順に機械的性質が変化します。また、基地組織の違いによって基地延性が異なる場合は、この黒鉛の切欠き効果の影響度合いが異なることも知られています2)。このことは、機械的性質だけでなく、衝撃特性や疲労特性にも密接に関係します3)。さらに黒鉛粒径の関係については、黒鉛面積率との兼ね合いにも依るため、一概には結論付けられませんが、粒径の小さい場合の方が伸び(延性)は大きい傾向となり易く、衝撃特性では、粒径の小さいものの方が延性域(上部棚)衝撃値は低く、衝撃遷移温度は低くなる傾向となるようです4,5,)。
1) 塩田俊雄,小松眞一郎:鋳鉄の有効断面積と静的強さとの関係について, 鋳物49(1977), pp.602.
2) 原田昭治,小林俊郎編著:球状黒鉛鋳鉄の強度評価,アグネ技術センター(1999),p56-58.
3) 中江秀雄監修:新版 鋳鉄の材質,日本鋳造工学会(2012),p29-30.
4) 原田昭治,小林俊郎編著:球状黒鉛鋳鉄の強度評価,アグネ技術センター(1999),p21-25.
5) 永井恭一,岸武勝彦:球状黒鉛鋳鋳鉄の衝撃特性に及ぼす黒鉛粒径とフェライト結晶粒径の影響,鋳物,62,1990,pp.124.
(『鋳造工学』98巻4号掲載)

