Al-Si系合金ダイカストにおいて,組織写真からチル層を判別することは可能でしょうか?可能であれば,その判別方法を教えて下さい
可能です.ダイカストに一般的に用いられる亜共晶から共晶組成までの合金の例に述べます.金型内へ溶湯が充填完了すると,溶湯はプランジャーからの圧力を受け金型キャビティ面へ強く押し付けられます.この面は溶湯に比べ非常に低温なので,接した溶湯は肉厚中心部よりもはるかに速い短時間で凝固するため,鋳肌表面から数十から数百μm程度の厚さで比較的微細な初晶α相が緻密に分布する層が観察されます.これをチル層と呼びます.急冷組織になるため初晶α相は樹脂状に成長できないため,密集した粒状晶の形態を呈することが多く,他との判別は容易です(図1).急冷凝固なので凝固収縮巣は殆ど存在せず,溶質元素の固溶量が比較的大きいため,合金系によっては肉厚中心部等に比べマトリックスの硬さが増します.鋳造条件やキャビティ形状によっては離型剤の巻き込みのリスクがあり,溶体化処理を実施した場合に小さなふくれ(ブリスター)が生じる場合があります.材料成分,充填条件,離型剤,金型温度,型材等でも凝固速度が変化するため,チル層のミクロ組織の見え方は変わります(一般的に熱伝達が良好だと,より厚く,より緻密なチル層が観察される).

図1.チル層のミクロ組織の例(Al-10%Si合金ダイカスト)
(『鋳造工学』98巻4号掲載)

