鋳造CAE解析でミーゼス応力と主応力について、解析で出た値に対してFC,FCDで応力割れに強度対応出来る材質判断の考え方、計算方法を教えてください

ご質問頂き有難うございます。自硬性の鋳型の中で、冷却中にFC が割れたことがあり、解析上、相当応力が高い部分が割れているようだとのことでした。相当応力が高い部分と割れた部分が一致しているとのことで、解析による予測が実用に足る程度にできているように思います。(僭越ながら大変結構な予測技術をお持ちと思います。)FCの場合は最大主応力で見る方が良いかもしれません。鋳物が冷却する過程で、塑性ひずみを溜め込んで徐々に加工硬化した後にクラックが入るような材質の場合は、相当応力や相当塑性ひずみをみるほうが良いと思います。たとえばFCD の場合でしたら、相当応力もみたほうが良いと思います。鋳物が冷却中のとき、型の各部の応力もみてみると良いです。型の反力が割れの原因になっているかどうか、ヒントが得られると思います。10ton もあるような大型の鋳物が自硬性の鋳型の中で冷却するときに、出荷を早めるために水をかけるという操作をすると FCD でも割れるかもしれませんね。反りなどの変形はもとよりです。鋼の鋳枠(金枠)の応力もみるとなお良いですね。金枠が鋳型の変形を拘束し、鋳型が鋳物の変形を拘束している様子を捉えられるかもしれません。

型が鋳物の変形を拘束していると、その拘束の程度によって、割れの原因になる可能性があります。その場合は、型を分割して湯が差し込まない程度の隙間をあえてつくり、熱荷重を逃がすなどの対策をとることができるかもしれません。より高強度の材質に変更すれば、割れなくなるであろうと断言することは困難です。強度は低くなるかもしれませんが基地組織をパーライトからフェライトなどの柔らかいものに変更すると割れにくくなるということも考えられます。やわらかい材質にすることで鋳物が高温でクリープ変形(回復、アニールと表現したほうがより正確)して応力が上がりにくくなり、割れにくくなる可能性があるためです。合金(材質)を変えたときに割れるかどうかを解析で予想しようとすると、対象とする合金の温度ごとの破断強度と延性(破断ひずみ)が必要になります。かつ、温度ごとの応力ひずみ線図、ヤング率なども必要になります。鋳物の冷却中に発生する応力やひずみの分布を計算して、その温度ごとの破断応力や破断ひずみと比較するというのが、ひとつの方法になります。このとき型の温度分布と応力分布も解析します。物性値や特性値を外注で取得すると数百万円程度かかることがあります。また解析ソフトウエアがこれらの高温の物性や力学特性値を入力値可能な熱応力解析対応ソフトウエアである必要があります。こうした解析を実施したとしても、高い確率で割れるかどうかを判定できるかはわかりません。今日現在の熱応力解析のレベルでは、やっと研究レベルから実用レベルにはいるところと思います。強引に弾性体として扱ったとしても、どこが割れやすいか判定できている報告例があります。その方が、よほど簡易的です。社内的には、正確な応力値は不要で、割れさえ予測できればよいのですから。

一方、割れや変形、残留応力の予測のニーズは高まっています。将来、解析精度が高まると思います。貴社内で様々な合金について、かつ様々な形状の鋳物について割れた事例がありましたら、あるいは変形した事例がありましたら、解析値と比較することによって、貴社における予測レベルを上げることができると思います。結果として、材質を変更することなく、湯口やゲートの位置、押湯の位置を変えることで割れや変形を抑えられるようになる可能性があります。かけがえのないノウハウになるかもしれません。人工知能の利用も考えられます。その場合は、あとでブラックボックスとなり物理として原因を認識できなくならないようにしたほうが良いですね。

(『鋳造工学』98巻8号掲載)