鋳鉄は,生産性の良い金型をあまり使わないのはなぜですか?

鉄には非鉄や鋼とは異なり,チル化という問題があります.これが,金型をあまり用いない最大の原因です.

鋳鉄は,ジキルとハイド氏のように黒鉛が出るタイ プ(片状黒鉛や球状黒鉛鋳鉄)とチルと言って黒鉛が析出しない硬くて脆いタイプの2面性を有した困った材料です.冷却速度に合った黒鉛核生成能力と成分に しないと,ハイド氏のようにチルになってしまいます.その他の問題としては,溶解温度がアルミニウム合金や銅合金より高いという問題もあります.温度が高 いので,金型が長持ちしなかったり,溶湯と金型がくっ付いたりすることになります.

しかしながら,鋳鉄の金型鋳造が全く行われていない訳ではありません.昭和51(1976)年11月には,「鋳鉄の金型鋳造」という本が日本鋳物協会(現 在の鋳造工学会)から出版されています.その本によれば,1965年における各国の鋳鉄生産量における金型鋳造の比率は,ソ連9.5%,東ドイツ 5.8%,アメリカ3%,西ドイツ1%となっています.

当時のショット回数は,500-5000回程度だったようです.また,鋳造工学会への「鋳鉄の金型 鋳造」に関する研究論文は34件出されています.どなたかが、生産性の良い鋳鉄の金型鋳造を開発すれば,鋳鉄の世界もダイカストのようになるのかもしれま せん.