超音波伝播速度を測定すると鋳鉄の黒鉛球状化率がわかるのはなぜですか? 球状化率は%で音速はm/sですよね?
超音波の伝播速度(音速)や共振周波数,打音試験などの非破壊試験が有ります.
この中で普及しているのが音速法です.音速(V )は,伝播媒体となる鋳鉄品のヤング率(E ),密度(ρ)からV ∝ √(E/ρ)・・・①で求めることができます.だからといって,これらの物性値を個々の鋳鉄で求める必要はありません.速度ですから伝播距離(L)と伝播 時間(T)からV=L/Tの式で計算できます.
音速測定が出来ても「音速と黒鉛球状化率との関係」が分からない.以下に双方の関係を説明します.
片状黒鉛-,CV黒鉛-,球状黒鉛鋳鉄など鋳鉄の名称に黒鉛形状が冠されているのは,内在する黒鉛形状がそれぞれの鋳鉄の機械的物理的性質を決定してい るからです.
ヤング率もその一つで片状黒鉛鋳鉄<CV黒鉛鋳鉄<球状黒鉛鋳鉄の順に増加します.これらの鋳鉄の密度は,約7, 000kg/m3(7.0g/cc) で殆ど差がなく,公式①から黒鉛形状で音速が変化することが理解できます.これまでに同じ製造履歴を有する黒鉛形状の異なる(フェーディングさせた)鋳鉄 の黒鉛形状(黒鉛球状化率,形状係数など)と音速の関係が調べられ,これらの間には非常に高い正の相関関係が存在していろとの研究報告が幾つもあります.
国内の報告では,日本鋳物協会,研究報告47(1987)が参考になるでしょう.