AC4C等のアルミ鋳物の組織改良剤としてSr(ストロンチウム)がよく使われていますがこれは放射性物質と聞きました.人体に影響はないのでしょうか

ストロンチウムという元素は原子番号38の元素です.陽子が38個,中性子が46~53個,質量数(陽子数+中性子数)が84~91です.4つの安定同位 体(ストロンチウム84,86,87,88)と,3つの放射性同位体(ストロンチウム89,90,91)があります.

安定同位体のストロンチウムの存在比 はストロンチウム88が82.58%と最も多く,ついでストロンチウム86が9.86%,ストロンチウム87が7.0%で,ストロンチウム84は 0.56%とほんのわずかです.安定同位体は放射性物質ではありませんので,放射線を出しません.

放射性同位体のストロンチウムは,原子力発電の燃料であるウランが核分裂反応をする時にできる放射性物質です.ストロンチウム90は寿命が半分になる半減 期が約29年と長く,ベータ線を出してイットリウム90(放射性同位体)に変化します.これはさらに,ベータ線を出してジルコニウム90(安定同位体)に 変化します.

放射性同位体のストロンチウム90が危険なのは,半減期が約29年と長く,その間はベータ線などの放射線を出し続けることです.特に,カルシウムと似た性 質を持ち,体内に摂取されると骨の無機質部分に取り込まれ長く残留することです.放射性同位体は半減期が異なりますが,いずれも放射線を出しますので,体 内に摂取された場合には内部被爆という甚大な影響を受けることになります.

AC4C等のアルミ鋳物の組織改良剤として使われるストロンチウムは安定同位体ですので,ほとんどがストロンチウム88と思われます.従って,ベータ線な どの放射線を浴びることはなく,人体に影響はありません.