金型にはいろんな表面処理がありますが,選定に困っています.どのように処理方法を選定したら良いのでしょうか
金型の表面処理には,大きく分けて「拡散処理」と「表面被覆(コーティング)処理」があります.拡散処理は窒化に代表され,窒素,炭素などの原子を 金型内に拡散浸透させて型材成分である鉄,クロムなどとの窒化物,炭化物などの化合物を生成させて金型内側に硬化層を形成する方法です.表面被覆処理は金 型表面に皮膜物質を蒸着,反応創成する方法でPVD,CVD,プラズマCVD法があります.
表面処理の選定では目的,使用部位で使い分けることが最も重要となります. 窒化でもヒートクラック抑制には表面に化合物層がなく浅い拡散層の処 理が有効ですが,焼付き・溶損抑制はまったく逆で表面に化合物層を形成し拡散層が厚い処理が良いので,注意が必要です.一
般的には,長寿命を要望される キャビティ型はヒートクラック抑制がメインなのでガス窒化やガス浸硫窒化などが使用され,小型の入子や鋳抜きピンなどは定期交換が可能で焼付き・溶損抑制 がメインなので,塩浴窒化,塩浴浸硫窒化,TRDおよび表面被覆処理が使用されます.
表面被覆処理は拡散処理と違って,型材とまったく違った組成のアルミ溶湯と反応しない皮膜を形成できるので焼付き・溶損に効果が高くなります.目 的,使用部位を明確にして,窒化では化合物層の有無と拡散層の深さ,表面被覆では皮膜組成と厚さをどうするかを表面処理メーカーと相談しながら,処理方 法,処理条件を選定することが重要です.