実体鋳物では,急冷組織にしても思うように材料特性が上がらないのはなぜでしょうか?

鋳物の凝固組織は通常デンドライト組織を有し,凝固組織すなわちデンドライト組織は冷却速度に依存します.

また,材料特性である機械的性質はこのデンドラ イト2次アーム間隔に依存性があり,一般的に,急冷組織(組織を細かくすること)にすることにより材料特性を向上させることが出来ます.逆に鋳物において 材料特性を低下させる要因の一つは材料内外に欠陥となるものを含むことであり,その代表例としては,外部欠陥の湯境,内部欠陥の引け巣,介在物,ガスの巻 き込み巣,ダイカストであれば,破断チル層などです.

実体鋳物では前述した欠陥を皆無にすることが難しいため,急冷しても上記欠陥により思うような材料特 性が得られない場合があります.また,急冷組織を作るために金型が冷えすぎていて湯境欠陥が増えていたり,凝固バランスが崩れて溶湯補給が不十分になり引 け巣が発生したりなど欠陥を増やしてしまうこともあります.材料特性を向上させるには急冷することばかりでなく,鋳造方案の見直しや製品形状の見直しなど も必要になってくると思います.