球状黒鉛鋳鉄は構造材として何℃まで使用可能でしょうか?球状黒鉛鋳鉄の温度変化に伴う強度について教えて下さい.

 球状黒鉛鋳鉄の温度変化に伴う強度の変化ですが,室温以下の低温では脆化現象を引き起こす事により,引張強さ及び耐力は増加し,伸びは低下します.一方,高温側では約200℃付近までは引張強さは概ね室温と同定度の強度を示しますが,300℃以上になると強度は急激に低下し,500℃以上では室温での引張強さに比べ,半分程度となることが報告されています.

 また,一般に構造材料として用いられている球状黒鉛鋳鉄は,基地組織がフェライトとパーライトの混合組織もしくは単相のものですが,特にパーライトを基地組織とするものは高温になるにつれて,強度低下が顕著に見られます.また伸びは基地組織によらず温度上昇とともに低下していきます.特に400℃付近では室温での伸びに比べ,半分程度となりますが,その後は回復傾向を示します.これは基地組織中のパーライト量が多いほど増加していき,基地組織がパーライト単相のものでは室温での伸び以上になることが報告されています.

 これらのデータから判断すると,球状黒鉛鋳鉄を構造材料として使用するには200℃までと言えるでしょう.(『鋳造工学』87巻9号掲載)