欠陥の原因を簡単に判別する方法はないでしょうか?
【鉄の場合】
鋳造各工程のセンシングと,欠陥部の画像解析などにより欠陥名を判定し,ビックデータからAI知能が欠陥原因を判別することが近い将来であり,この時は簡単かつ瞬時に判別できる様になると思います.
現時点の方法としては,欠陥名を最初に判別すれば,原因は文献やデータベースなどから得ることが簡単な方法と言えます.対策事例も文献やデータベースに記されています.
具体的には,最初に欠陥名を発生位置,鋳造条件,不良率,外観,顕微鏡などから判定します.欠陥の発生原因が比較的単純な欠陥はこれで欠陥名が分かりますが,肉眼では欠陥発生機構の分からない場合は組織,SEM・EDS,ONH,化学成分などを追加して判定します.欠陥名が分かれば分類と原因を記した「学会創立75周年記念出版『鋳造欠陥とその対策』」,「国際鋳物欠陥分類図集 (1975年)」,「鋳鉄鋳物製造現場のQ&A(日本鋳造協会)」,「Web欠陥大百科(日本鋳造協会)」などの文献やデータベースから原因と対策事例を知ることができます.なお,これらには様々な事例から得られた対策が列挙されていますので,自社の鋳造工場に最適なものを判断して選ぶ必要があります.鋳造工場毎に製品,使用材料,工程などが限定されていることから発生する鋳造欠陥もパターン化されていることが多く,社内の経験を有する専門家の意見や時には社外の専門家の意見を参考にするのが良いと言えます.
鋳造の歴史は欠陥対策とも言え,欠陥名の判別方法,欠陥事例,対策事例は既に膨大なものとなっていますので,これらを利用することが質問の答えではないかと思います.
【非鉄の場合】
非鉄鋳物の欠陥は,大きく分けると外部欠陥と内部欠陥になります.
外部欠陥は,外ビケ,割れ,などが代表的なものです.外ビケは,アルミニウム合金など凝固収縮率の高い合金で起こりやすい現象で,方案や製品を見ることで押湯が不足しているのか,肉厚が厚いためかなど原因がわかります.割れは,割れ界面の中を観察し,デンドライトの突起があれば凝固割れ,ディンプル破面であれば,収縮割れと判断できます.どの外部欠陥においても,欠陥部を詳細に見ることで,およその原因を掴むことが出来ます.
内部欠陥は,加工で現れる場合と,X線などで観察する場合があります.加工部に現れる場合は,欠陥内部の状態を観察し,デンドライトの突起があれば引け巣,内部が平滑であればガスの巻込みであることが判別できます.X線等で観察される場合は,欠陥があるところを切断し,欠陥を直接観察することで原因を掴むことができます.判別方法は加工部と同様です.
代表的な欠陥について述べましたが,ここに出てこない欠陥も多くあります.まずは,欠陥を直接観察し,その原因を掴むことが大事であると思います.
(『鋳造工学』89巻7号掲載)