鋳造現場では,熱分析曲線を用いてC%,Si%を判断していますが,どのような原理でこれらの含有量を出しているのでしょうか?

 図1に示すように,溶湯の熱分析を行うCEメーターのカップには,チルさせてセメンタイト共晶温度を測るテルル(Te)入りカップと,カップ内に何も入っていないタイプのカップの2種類があります.また,黒鉛共晶温度を測るための接種剤入りカップなどもまれに使われます.Si値を測定する目的のテルル入りカップでは全チルになるため,初晶温度とセメンタイト共晶温度は測られますが,溶湯性状を判定することはできません.それに対して,何もなしカップを使って,溶湯性状を判定することが行われています.

図1 カップの種類と共晶温度の関係

 図2に示すように,Si量とセメンタイト共晶温度の間には,[セメンタイト共晶温度=1142.6-11.6×Si量]の関係があります.一方,図3に示すように,C量を変えても,一般的な鋳物の成分範囲(2.9~4.2%)では,セメンタイト共晶温度は変わりません.よって,セメンタイト共晶温度を測定することにより,Si量を推定できます.例えば,セメンタイト共晶温度が1120℃ならば,Si量は約1.95%になります.

図2 Si量とセメンタイト共晶温度の関係

図3 C量とセメンタイト共晶温度の関係

 Te入りカップの初晶温度より,炭素当量(CE)が分かります.この炭素当量を現場管理の範囲として使用し,無理にC%を出さない会社も多くあります.炭素当量からCを求める計算式としては,CE(=C+(1/3)×Si)またはCEL(=C+0.23×Si)が用いられています.いずれにおいても,セメンタイト共晶温度から求めたSi量と,初晶温度から求めた炭素当量より,C量が推定できることになります.ただし,セメンタイト共晶温度はCrなど他の元素によっても変化するため,正確にはそれらの元素も考慮する必要があります.

(『鋳造工学』89巻8号)