最近の自動車のボディはマルチマテリアル化が進んでいると聞きます.しかし,電位差の異なる材料を用いると腐食が進むと思いますが,大丈夫ですか?

自動車の軽量化のために,軽量材料を適用していくことが検討され,高級車やスポーツカーを中心に,アルミニウム合金やマグネシウム合金が使われてきています.近年の傾向として,機械的性質やコストの観点から,種々の材料を適材適所に組み合わせて使うマルチマテリアルボディが増えてきています.ご指摘のように,いろいろな種類の金属材料を用いるとガルバニック腐食(異種金属接触腐食)が起きる可能性があります.ガルバニック腐食とは,電解質水溶液中において異種金属材料を接触させた時に生じる腐食現象であり,電位が卑な金属がアノードに,電位が貴な金属がカソードになり局部電池が形成されます.このため,電位が卑な金属の腐食速度が増大します.マグネシウム合金やアルミニウム合金は電位が卑であるために溶液中に溶け出し,腐食が進みます.

ガルバニック腐食を防止するためには,異種金属同士が接触しているところで局部電池を作らせないことが重要です.金属の表面に塗装や表面処理をすることにより,金属同士を絶縁したり,腐食電位差の小さい材料を間に挟んだり,水がかからないあるいは溜まらないような構造にしたりしています.マルチマテリアルボディの開発には,材料そのものの開発や接合技術に加えて,このような耐食性を向上させるための技術開発も重要になります.

(『鋳造工学』90巻8号掲載)