「炭素当量」の出自は?同じCE値でもC%が高い時とSi%が高い時の溶湯の特性を共晶凝固と共析変態過程及びひけ傾向について教えてください.

炭素当量(Carbon Equivalent:CE )とは鋳鉄中のSi,P量の影響の度合を⊿関数1)で示すC %として表し,これと実際の鋳鉄中のC%との和の値で,次の(1)式で表すことが多くあります.

CE=C%+(Si%+P%)/3.2                     (1)

ここでの⊿関数は,溶融Fe-C合金に添加される第3元素が炭素の溶解度に与える影響,さらには炭素の活量の増加又は減少,つまり炭素を黒鉛あるいはセメンタイトとしての晶出のしやすさを関数化したものです.その詳細は最近出版された図書2)にわかりやすく解説されています.共晶凝固,共析変態過程及びひけ傾向に関して,同じCE値でもC%又はSi%が高い時の影響を考えてみましょう.まず,共晶凝固及びひけ傾向の場合,C% が高ければ高いほど,Cの活量が高くなり黒鉛として晶出しやすく,黒鉛晶出量も多くなると考えられます.よって,ひけが小さくなる傾向になります.

一方, Si%が高くなればなるほど, Cの活量が増加しますが溶湯への溶解度は減ります.そのため,黒鉛の晶出量は減少します.Si%が高すぎる溶湯は,ひけやすくなるという鋳造現場の経験は少なくありません.

共析変態過程の場合,同じCE値でもSi%が高い時,共析変態点は高温側に移動し,かつ変態温度が一定温度ではなく,ある温度範囲にわたって進行します.この共析温度範囲内ではオーステナイト,フェライト及び黒鉛の3相共存になることが特徴です.鋳鉄を熱処理するとき,この点に留意する必要があります.

1) F.Neumann, H.Schenck, W.Patterson:Giesserei Tech.-Wiss.Beih.,23(1958)1

2)例えば,日本鋳造工学会編:新版 鋳鉄の材質(日本鋳造工学会)(2012)10

(『鋳造工学』88巻12号)