アルミニウム合金ダイカストの材料強度を左右する因子にはどんなものがあるのでしょうか?

アルミニウム合金ダイカストの材料強度は,鋳造欠陥の存在,凝固組織の大きさ,材料成分の影響を受けます.

特に鋳造欠陥による材料強度への影響は大きく要求品質に強度要件がある製品の製造では,鋳造欠陥をなくす工程検討が必要になります.鋳造欠陥には,①スリーブ内で溶湯の一部が凝固して巻き込まれる破断チル層,②空気や離型剤・潤滑剤が溶湯と反応してできるガスの巻込巣,③肉厚部で溶湯補給が不十分でできる引け巣,④溶湯中に含まれる介在物,⑤ガスの介在による表面の融合不良でできる湯回りや湯境などの表面欠陥があります.特に①の破断チル層は,スリーブとの接触で酸化被膜が形成されるので強度低下への影響が大きくなります.

凝固組織(Al初晶αや共晶の組織)は,主に冷却速度によって変化し,製品肉厚が厚く,金型温度が高いほど,凝固組織が大きくなり,強度特性が低下します.表面チル層は強度特性が良いので,この部位を削除する機械加工の有無によっても製品の強度特性が変わります.

アルミニウム合金ダイカスト生産の95%はADC12が使用されますが,規格の範囲内でも主要元素のSiの量や不純物のMg,Feの量によっても強度特性が変化します.