アルミ鋳造は高圧射出造形(ハイプレッシャーダイカスト)が主流となってきていますが,重力鋳造や低圧鋳造も一定量残っています.どのように工法の棲み分けをしているのでしょうか?

 アルミニウム合金の鋳造工法にはいろいろな種類があり,それぞれ特徴があります.溶湯にかける圧力によって分類すると,ハイプレッシャーダイカストやスクイズダイカストは高圧力で鋳造する方法で,重力鋳造法や低圧鋳造法は低圧力で鋳造する方法です.低圧力で鋳造すると砂中子を使うことができ,エンジンのシリンダーヘッドのような中空で複雑な鋳物を鋳造することができますが,薄肉の鋳造は難しく,サイクルタイムも長くなります.

 一方,高圧力で鋳造した場合には一般に砂中子を使用するのが難しいため,アンダーカットを持つ鋳物を作ることが難しくなります.ハイプレッシャーダイカストは高速高圧で溶湯を射出するため,薄肉鋳物が得意で,サイクルタイムが早く,生産性がよい工法です.スクイズダイカストは,射出速度が遅いため薄肉鋳物は難しいですが,内部欠陥の少ない厚肉鋳物を作ることができます.

 近年,開発が進み,砂中子を使ったダイカストや比較的薄肉鋳物が鋳造できる低圧鋳造法が開発されてきており,それぞれの工法の領域が広がっていますが,製品の要求特性を高品質・高生産性で満足する工法が選択されています.

(『鋳造工学』93巻6号掲載)