シミュレーションの上手な使い方,限界について教えてください.
鋳造CAEにおけるシミュレーションと言っても,湯流れシミュレーション,伝熱・凝固シミュレーション,熱応力シミュレーションなど多種があります.
開発 と適用の歴史から,伝熱・凝固シミュレーションと湯流れシミュレーションもほぼ実用域に到達していると推測できます.熱応力シミュレーションやその他の造 型シミュレーション,マイクロシミュレーションなどはもう少し時間が掛かるでしょうか.
では,何をもって実用的か否か判断しているのでしょうか.色々な考え方があるかと思いますが,ある程度のCPU計算時間で,ある程度の(欠陥予測の)精 度,を得ることができるか,に尽きると思います.この「ある程度」が微妙で,使っている計算機PCの処理速度&メモリに依存しますが,2時間後に結果が欲 しいとか,終業前に計算を開始して翌日の始業時間に終わって欲しいとすれば,10時間ほどになるでしょうか.このように限られた時間内に,如何にほしい精 度レベルをもった計算結果を得ることができるかが重要です.
これに大きな影響を与える要因の一つがメッシュの大きさと総数です.メッシュを小さく分割する と基本的に精度が上がり小さな欠陥も予測できますが,逆に計算時間が長くなり大容量のメモリも必要となります.大きなメッシュでは計算時間は短いですが予 測できる欠陥レベルもおおざっぱです.また解析精度には,物性値をはじめとするパラメータの精度,時間や温度の依存性なども影響を与えます.これらを踏ま えて,各ユーザは自分に適したデフォルトの解析条件を見つけることが,上手な使い方の一歩だと思います.
もう一つのシミュレーションの限界ですが,理論的には「ない」と思います.ただし,計算機の能力とソフトウェアの機能を考えれば実用上の制限はあると思い ます.前述のとおり,時間を限定すれば計算(予測)できる内容や精度には限界があります.また,シミュレーションソフトに所望の理論解析が組み込まれてい るか,理論と実現象との検証は十分なされているかの問題もあり,この意味でも限界があるでしょう.
ただし,これらはマシン性能の向上,また検証実験や結果 比較が進むことで順次改善されていくものと推測されます.