ダイカストでは鋳造圧力と投影面積から型開き力を算出しますがなぜ製品投影面積1面分しか使用しないのでしょうか? 圧力は流動体に均等に伝播するので固定側と可動側を足した面積が必要になるのではないでしょうか? 固定側は動かない=型開き力が働かないので必要ないということでしょうか?

 質問者のおっしゃる通り,可動型と固定型の両方に溶湯の力が働き,金型が開きます.可動型,固定型ともに型開き力相当の力が必要です.しかし,ダイカストマシンでは可動型にかかる力が機械的に固定型にかかるため,型締め力は片側の型開き力のみを計算すれば良いのです.
 詳しく説明すると,一定の距離を隔てて配置された固定プラテンとリンクハウジングをタイバーで一体化し,その間にタイバー内を移動可能な可動プラテンを配置しています.可動プラテンは,リンクハウジングに押されて固定プラテン側に移動することができます.固定プラテンと可動プラテンで金型(固定型と可動型)を挟んで型締めする機構です.この機構により,固定型には可動型を押す力と同じ力が働きます.つまり,可動型を押す力がリンクハウジングを押し,その力がタイバーを介して固定プラテンに伝わり,固定型を可動型側に押します.このような機構のため,型締め力は可動型を押す力のみで計算できます.

(『鋳造工学』95巻4号掲載)