ダイカスト製品取り出し後の水冷にはどのような意味があるのでしょうか?

製品を型から取出した後の水冷にはいくつかの目的があります.一般的なダイカストにおいて行われる水冷は,通常,できるだけ早く製品を冷やしてゲートの切 断やバリ取りを行うことを目的としています.

早く冷却することで,短いサイクルタイムでの生産を可能にします.T5処理を行う製品では,材料に含まれる銅 やマグネシウムを過飽和に固溶させて機械的強度を向上させます.重力鋳造や低圧鋳造の鋳物において行われる取出し後の水冷は,ほとんどの場合,T5処理に おける機械的性質の向上を目的としています.

いずれの鋳造法においても,できるだけ高い温度から冷却することによってT5処理後の強度を高くすることができますが,安定した強度を得るためには,水 没時の鋳物の温度と水温を一定にすることが重要です.

逆に水冷するときの水温や浸漬のさせ方によっては,ひずみ,変形あるいは鋳ぐるみ材のはがれなどを生 じさせることがあるので注意が必要です.あまり実施例は多くないかもしれませんが,T5処理を行わない製品でも自然時効による強度向上を狙って意図的に水 冷を行う場合もあります.

特殊な例としては,アブレーション鋳造のように,水流で砂型を除去するのと同時に鋳物も急冷し,ミクロ組織の微細化や固溶量の増大による高強度化を図る 鋳造法もあります.